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IWCでの妥協案の模索と挫折(1997~2010):決裂は不可避だったのか [クジラ]

 報道されています通り、6月30日に日本は国際捕鯨委員会(IWC)を脱退し、7月より商業捕鯨を排他的経済水域内で実施する予定です。調査捕鯨、南極海捕鯨から撤退し、200カイリ内のみで操業することとなります。
 ところで、「調査捕鯨・南極海捕鯨から撤退する代わりに、200カイリ内のみで捕鯨を行う」というのは実のところ、IWCに留まるかたちで合意が可能なのではないかと思われるほぼ唯一の妥協案ではないかと関係者の間で言われてきました。もしそうだとすると、日本の脱退は何の意味もなかったことになります。これに関するエッセイをニューズレターに書いてみましたので、今回はそれをここにもアップしてみました。結論から先に言いますと、日本は「公海からの撤退、200カイリでの商業捕鯨再開」という妥協案が提示されていたにもかかわらずこれを拒否したこと、そうこうしているうちに捕鯨船はどんどん老朽化、結局立ち行かなくなり「IWCからの堂々脱退」というフレーミングの下、IWCで交渉していたら得られたはずの案を脱退によって実現するという倒錯的状況に陥ったことを記しています。や長いのですが、ご関心おありの方は是非。

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【IWC第67回総会(2018)の模様】

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IWCでの妥協案の模索と挫折(1997~2010):決裂は不可避だったのか
真田康弘(早稲田大学地域・地域間研究機構 研究院客員准教授)
『IKA Net News』第73号(2019)4~17頁。

1. はじめに

 2018年12月26日、日本政府は国際捕鯨取締条約からの脱退を条約寄託国である米国政府に通告した。条約の規定に基づき、日本は2019年6月30日付で国際捕鯨委員会(IWC)から脱退することになる。日本は7月1日から商業捕鯨を開始するとの意向を表明している。
 広く報道されているように、商業捕鯨再開が予定されているのは日本の排他的経済水域に限られる。これまで日本は国際捕鯨取締条約第8条を援用し、科学調査目的として南極海(ミンククジラ333頭)及び北西太平洋(ミンククジラ170頭、イワシクジラ134頭)で捕獲してきたことと比較すると、操業海域は大幅に縮小することになる。再開する商業捕鯨では「IWCで採択された方式で算出された枠で管理」する旨長谷水産庁長官は表明している(1)が、IWC科学委員会の作業部会で2013年に暫定的に推算された北太平洋ミンククジラの捕獲枠は17~123頭とされており(2)、これは200カイリはもとより公海も含んでいること等を鑑みると、IWCの算出方式を厳格に適用する限り、捕獲頭数の減少は免れない。捕獲頭数算定については、変数をIWC科学委員会で採用しているものから緩めに調整して頭数を増やすことも考えられるが、調査捕鯨時から捕獲頭数が大幅に増えるとは、やはり考え難い。
 脱退により日本は公海からの捕鯨から撤退することになるが、これまで多くの識者から「公海での捕鯨を諦める代わりに、排他的経済水域内での商業捕鯨を認める」というのはIWC内で成立し得る数少ない妥協案であると言われてきた。1997年に当時のIWC副議長であったアイルランド代表のマイケル・カーニーから提示された提案である。これについて日本の交渉担当者は「日本は拒否していない」「『満足はしていないけれども、提案そのものは議論のベースになる』という言い方をし(た)(3)」「妥協に向けた対話に前向きに応じていた(4)」としている。もしそうであったとすると、「公海撤退と引き換えの200カイリ操業」妥協案の失敗は反捕鯨国の頑なな反対のためと捉えられ、ゆえに脱退はやむを得ない選択だった、ということにもなり得る。他方、反捕鯨国側にも妥協案を受け入れる余地があり、むしろ頑なに拒否をしたのは日本であったとするならば、妥協の機会を日本はむざむざ逃してしまったことになる。実際はどうであったか。この点を探ってみることとしたい。

2. アイルランド妥協案と日本の対応

 1982年に商業捕鯨モラトリアムが採択されて以降、IWCでは捕獲枠算定方式のための交渉が続けられ、この結果1994年に「改定管理方式(Revised Management Procedure: RMP)」と呼ばれる新方式がIWCで採択された。IWCでは監視員制度などの新たな規制メカニズム「改定管理制度(Revised Management Scheme: RMS)」を策定するための交渉が1992年に採択された決議を契機に開始されていたが、交渉は難航し、捕鯨推進国と反捕鯨国の間で議論は平行線を辿っていた。
 こうしたなか、交渉打開を図るべくアイルランドのカーニー副議長が1997年のIWC本会議で提案したのが、いわゆる「アイルランド提案」と呼ばれるものである。その骨子は以下のようなものとなっている。

① RMSを完成し採択する。
② 現在の捕鯨操業国に限り、排他的経済水域内での捕鯨を容認する。
③ その他全ての海域は、捕鯨が全面的に禁止される「サンクチュアリ」とする。
④ 鯨肉の消費は捕獲された地域内に限定し、輸出入を行わない。
⑤ 調査捕鯨は段階的に廃止する。
⑥ ホエールウオッチングについての規制を行う。

 当時先住民捕鯨以外のIWC加盟捕鯨操業国は日本(調査捕鯨)とノルウェー(異議申立てに基づく商業捕鯨)のみであったが、これらにはIWCの規制の手が及んでいない。両国に限定的な捕鯨を認める一方で全ての捕鯨をIWCの規制の下に置くことがアイルランド提案の趣旨であった。1997年のIWC会合でアイルランドは正式な提案としてではなく口頭でアイルランド提案の骨子を説明、「捕鯨はゼロとする極と全面的な商業捕鯨との極の間に、中期的に捕鯨を制限するという全ての締約国によりコンセンサスが得られる余地があるように思われる」と指摘、自らの提案に対して追加の提案や修正にも吝かでないとし、コンセンサスに至る可能性があるならば、正式に提案を次回の会合で上程したいと発言した(5)。
 この提案に対し、先住民生存捕鯨国のデンマークは「アイルランドのイニシアティブとアイデアを原則として評価する」と提案に前向きな姿勢を表明、スウェーデン、ドイツ、メキシコ、オマーン、南ア、オランダ、スイスも提案を評価する旨発言した。他方ブラジル、チリ、アルゼンチン、モナコ、スペイン、フランス、英国、米国、オーストラリアは提案に慎重な姿勢を示し、ニュージーランドは提案に対して否定的な見解を表明した。また英国、米国、オーストラリアはいかなる形での商業捕鯨にも反対するとの立場を示した(6)。
 この会議で日本は「アイルランド提案に関する加盟国の生産的な議論を歓迎する」とする一方「いかなる新たなイニシアティブや提案も、入手可能な最善の科学的証拠に基づく持続的利用等の国際捕鯨取締条約のという根本原則を尊重しなければならない」との発言を行っている(7)。一見アイルランド提案を評価しているようにも聞こえるが、実際のところ水産庁の交渉担当者はアイルランド提案の骨子である公海での操業取りやめを検討するつもりは全くなく「論外、笑止千万の提案」「到底受け入れられない」との考えであった(8)。1997年のIWC年次会議に先立ち開催された自民党捕鯨議連でも「アイルランドの公海捕鯨禁止提案は科学的根拠が不明でIWC条約に反する」と玉澤徳一郎会長が強調、これを決して認めさせないことが確認され、この場に出席した島一雄IWC日本政府代表も「アイルランド提案は必ず斥けないといけない」と力説している(9)。

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【アイルランド提案への日本の立場を報じた新聞記事。『みなと新聞』1997年10月9日】

 アイルランド提案については、1998年2月に開催された中間会合、5月にオマーンで開催されたIWC年次会合でも引き続き討議された。中間会合ではアイルランド提案をベースに妥協案を成立させようとする中間派の国々が勢いで上回り、同提案に関する協議を継続することで合意したが、捕鯨国である日本とノルウェーは公海捕鯨の禁止に反対であるとの姿勢を明確にしていた(10)。
カーニーがIWC議長に就任した1998年5月の年次会合では、米国やオーストラリアは、アイルランド提案は妥協案の基礎にはなり得ないと否定する立場を表明したが、スウェーデン、スイス、オランダ、フィンランド、チリ、メキシコ、南アからアイルランド提案をベースに妥協案を策定すべきとの声が相次いだ。さらに興味深いことは、反捕鯨の立場をもっとも強く示すニュージーランドや英国からもアイルランド提案をもとに交渉すること、限定的な沿岸捕鯨の操業についても話し合う用意があるとされたことである。やや長くなるが、ニュージーランドの発言を以下引用してみよう。

「簡単に申し上げますと我々は話し合う用意がありますし、これは今テーブルに上がっている全てに関して話し合い、何らの前提条件も留保もつけないということを意味しております。こう申し上げるのは私にとって危険を伴うことでありました。しかし我々のよく知られたポジションにもかかわらず、我々は話し合う用意がありましたし、それに如何なる前提条件を付けるものでもありませんでした。我々の抱える問題を解決し得るプロセスを促進しようと考えたからです。しかしながら議長、対話と議論は一方の当事者のみでは成立しません。より正確に申し上げますと、議論の一方の当事者の参加だけでは成立しないのであります。モナコでの会議以降、私は他方の当事者から、全ての問題について前提条件を付けず話し合うというサインを待っておりました。そのサインがなければ、対話も行われませんし、そのプロセスもありませんし、いかなる解決策も導かれません。  議長、言葉というものは時としてたやすいものです。アイルランド提案を歓迎しますと言っただけで、これで十分と座って動かない、というのは十分ではないのです。誰もがアイルランド提案を歓迎しています。問題は、双方が具体案を話し合う意思があるのかという点なのです。私たちには確実にその意思があります。議長、もし議長が提案されたプロセスを我々として継続するのであるならば、意味のある回答が必要である、そのような段階に来ているのです。我々はそれがなければ継続することはできません。私は今、それを言うことが私自身にとって難題をもたらすにもかかわらず、沿岸捕鯨について話し合う用意がある、そう申し上げました。ではノルウェーは貿易(の制限)について話し合う用意があるでしょうか。(中略)日本は少なくとも南極海の捕鯨を終了することや、調査捕鯨をやめることを話し合う用意がおありでしょうか。公海の捕鯨を禁止することについて話し合う用意がおありでしょうか。これらは議長のパッケージ提案に含まれている要素です。私が提起したものではなく、議長の提案にあるものです。この委員会には妥協点の余地が大いにあり、委員会でこうした問題が討議されることが望まれています。繰り返しますが、我が国はこうした問題を話し合う用意があります。もし一方の側にも同様の話し合う用意があるのであれば、対話は成立し、このプロセスは進むこととなります。しかし、もしその用意がないのであれば、結論も得られることはありません。(11)」


 これに対してノルウェーは、妥協しようとしないのはむしろニュージーランドなどの側のほうだ、反捕鯨国は捕鯨国に全てを諦めさせ、自分たちは何も譲ろうとはしていないと主張。島一雄日本代表も以下のよう反論した。

 
「ニュージーランドのコミッショナーは先ほど、日本やノルウェーの側からのサインがないと仰いました。しかしここで指摘させて頂きたいのは、ニュージーランドからもそうしたサインがないという点であります。例えば、彼らの態度はカリブ諸国の提案による日本の小規模沿岸捕鯨に対する決議に対する態度からも明らかとなりました。こうした提案を拒否することは善意を示すものではないように思われますし、むしろそれはおそらく敵意を示しているのではないでしょうか(12)」


 これに対して英国代表は以下のように答えている。

 
「この会議場に座っているなかで、私の立場はニュージーランドと全く同一であると申し上げることに、幾ばくかの緊張を覚えます。英国は対話を行う用意があります。議長の提案のなかには我々にとって多大な問題となるところがあると考えていることを隠すつもりはありません。しかし、我々は全ての可能な解決策を検討する用意があります。しかし島代表のご発言をお聞きしたところ、進展が可能であるかといことについて確信が持てないということを申し述べておかなければなりません。  英国に限らず大多数の国々にとってカギとなるのが公海の捕鯨であり、とりわけ調査捕鯨であると思われます。日本が本当にこれを諦める準備がない限り、合意が可能とはならないでしょう。 この点につき誤解しないで頂かないように存じたいのですが、英国政府も沿岸捕鯨を含む解決策を受け入れるかどうか、私には確信が持てません。その点については率直に申し上げたい。しかし公海捕鯨を含む解決案を英国政府が受け入れることは絶対にありえないし、それこそが鍵となってくるということについては絶対の確信を有しております(13)」


 以上の発言から示されるように、米国とオーストラリア等強硬な反捕鯨国は除くと、ニュージーランドや英国も含める形で「捕鯨の操業を排他的経済水域に限定する」というアイルランド提案に基づく妥協が成立した可能性はあり得たと考えられよう。しかしながら公海からの撤退の「受け入れは不可能(14)」とする日本側はこれを拒否、話し合いは物別れに終わった。1999年と2000年にもアイルランド提案についての議論は行われたが、何らの進展も見られず。2001年のカーニー議長の退任をもって、アイルランド提案はIWCが消えることとなった。
 日本がアイルランド提案を受け入れようとしなかった理由としては、公海捕鯨の操業停止は自らの経営基盤を揺るがしかねないことから強く反対する捕鯨関係者の意向、商業捕鯨再開を推進する与党国会議員の意向が反映されたことが挙げられよう。また「『科学的根拠』や条約を重視した鯨類資源の持続的利用をすることを基本方針とする(15)」とし、ミンククジラ資源は豊富であると考えていた南極海からの撤退などあり得ないと政策担当者が考えていたことも挙げられよう。
 日本などがアイルランド提案の興味を示さなかった背景としては、ワシントン条約での鯨類附属書格下げ提案についての動向も考えられよう。1997年6月に開催されたワシントン条約第10回締約国会合では、日本とノルウェーよりミンククジラ等について商業的輸出入が禁止される附属書Ⅰから附属書Ⅱに格下げする提案が上程、いずれも採択に必要な3分の2の多数を得られなかったものの、ノルウェーの北大西洋ミンククジラ格下げ提案は賛成57、反対51と過半数を上回る支持を獲得した。「予想外の支持を集めることができた(16)」と捉えた日本側は、むしろIWCで攻勢を強め、沿岸はもとより公海での商業捕鯨再開を勝ち取る方針を強めたのではないかとも考えられる。
 
3. 「RMSパッケージ」議長提案(17)

 第二のIWCにおける妥協案策定の試みは、カーニー議長が議長を退任した2000年に副議長に選任され、2003年のIWC終了時に議長に就任したデンマークのヘンリク・フィッシャーの下で2004年より提起された「RMSパッケージ」提案である。捕獲管理・監視メカニズム等を含むRMSのための交渉は2000年代に入っても捕鯨推進国と反捕鯨国の間で合意形成に至らず、交渉が継続していた。そこで副議長として臨んだフィッシャーは2003年のIWC年次会合でRMSに関する小グループを自らの権限で設置したのである。フィッシャーはデンマーク、アイスランド、アイルランド、日本、オランダ、スペイン、スウェーデン、米国、を小グループのメンバーに招請し、2003年12月と2004年3月に会合を開催(アイルランドは他用務多忙のため欠席)、ここでの議論を基に「RMSパッケージ」提案を2004年のIWC年次会議に提出した。このパッケージ提案は以下のような内容となっている。

① 捕獲枠はRMPに基づき科学委員会で合意され委員会で承認されたものとする。
② 商業捕鯨が再開された場合、最初の5年等の期間は操業を排他的経済水域内に限定する(フェーズイン・アプローチ)。
③ 原則として全ての船に監視員を乗せるが、日帰りの小型船については「舶位置監視システム(Vessel Monitoring System: VMS)」で監視員に代える。
④ 違法漁獲を防止する措置として、各国でDNA登録と市場サンプリングを行うとともに、IWCで非加盟国・IWC加盟の非捕鯨国からのクジラの輸入を行わない旨求める決議を行う。
⑤ 遵守レビュー委員会を設置する。
⑥ RMSの実施費用については、各国の活動にかかわるもの(国内監視員、DNA登録及び市場サンプリング等)に関しては関係国政府が負担し、透明性の確保のための国際的な費用(国際監視員、各国におけるDNA登録及び市場サンプリングに関するレビュー等)に関してはIWC加盟国間で費用を負担する。
⑦ RMSの完成と商業捕鯨モラトリアムの解除をリンクさせるため、特定の日に商業捕鯨モラトリアムを規定した附表10(e)項が無効となるよう附表を修正する。
⑧ 調査捕鯨については、国際捕鯨取締条約でその実施が各締約国の権限として認められているので、法的拘束力を有さない「行為規範(Code of Conduct)」を策定する。
⑨ 「クジラの捕獲は不必要な苦しみを与えないようにする」旨の文言を附表に追加する等により動物福祉問題に配慮する。

 2004年にイタリアのソレントで開催されたIWC年次会合にフィッシャー議長は病気のため欠席したが、「RMSパッケージ」提案自体は審議された。ここでは小グループ参加国、反捕鯨国でも穏健な立場を取る国々(スイス、フィンランド、モナコ)、捕鯨国及び捕鯨再開を支持する国々を中心に、「RMSパッケージ」をベースに今後検討を進めるべきとの声があがる一方、小グループに招かれなかったニュージーランドは現在のままの「RMSパッケージ」は到底受け入れられないと主張した。同じく小グループに招かれなかったブラジル、アルゼンチン、ペルー、南アフリカは、南半球の加盟国が小グループに入っていないと問題視した。
 個々の「RMSパッケージ」の中で最も議論を呼んだものが、RMSの完成と商業捕鯨モラトリアムの解除をリンクさせるという点と、調査捕鯨についてであった。前者についてはドイツ、ブラジル、ニュージーランド、英国、オーストラリア、ベルギー、モナコが両者のリンク付けに強く反対し、後者についてはドイツ、アイルランド、南ア、英国、ニュージーランド、米国から、法的拘束力のない「行為規範」のみでは不十分とする意見が提示され、アイルランドや米国は調査捕鯨の中止を求めた。ニュージーランドは調査捕鯨の根拠条文となっている条約8条は「条約の中で最も乱用された規定である」として条約の改定を提案、これに対し日本から「ニュージーランドがそう思うなら国際司法裁判所に訴えればよいではないか」と反論している。
 こうした結果を受け、2004年のIWC年次会議では「RMSパッケージ」を進展させるため、RMSワーキンググループと小ドラフティンググループを設置し議論を進めるとの決議案がコンセンサスで採択された。しかし議長提案のいずれの項目についてもいずれかの国から異論が提示された結果、パッケージに含まれる選択肢が増えるだけの結果に終わり、RMSパッケージの策定に失敗した。2005年に韓国・蔚山で開催されたIWC第57回年次会議では日本が独自案を提出するも反対多数で否決、以降もRMSワーキンググループ及び小ドラフティンググループでの作業は続けられたが、議論が袋小路に至った点が合意されたのみの結果となり、2006年にセントキッツで開催されたIWC第58回年次会議でRMS策定に向けた試みは事実上停止した。
 「RMSパッケージ」交渉では、捕鯨推進国はできるだけ商業捕鯨の再開に負担とならないメカニズムの構築を志向する一方、反捕鯨国側は出来る限り保護的なRMSを求め、双方の溝は収斂するどころかむしろ広がった。相互に対する不信感は根強く、捕鯨推進国側はRMSの完成と商業捕鯨モラトリアムの解除をリンクさせるべきだと譲らず、他方反捕鯨国は、商業捕鯨モラトリアムを解除すれば商業捕鯨再開後に自らの意に沿わない捕獲枠等がIWCで採択された場合異議を申し立てるのではないかと危惧し、相互のリンクを認めようとはしなかった。また、調査捕鯨は条約上の権利であるとしてその継続を譲らない日本と、調査捕鯨の終了あるいは法的拘束力を伴う規制を求める反捕鯨国側は最後まで折り合わなかった。

4. 「IWCの将来」プロセスと議長・副議長案(2010年)

セントキッツ宣言・「正常化」会合とPewシンポジウム

 こうして捕鯨国と反捕鯨国が鋭く対立するなか、2006年のIWC年次会合では商業捕鯨モラトリアムは「もはや必要でない」とし「IWCの正常化」を目指すと謳った「セントキッツ宣言」が賛成33票(日本、アイスランド、ノルウェー、ロシア、デンマーク、カリブ諸国、韓国、ニカラグア等)、反対32票(欧州諸国、アルゼンチン、ブラジル、チリ、メキシコ、米国、オマーン等)、棄権1票(中国)と1票差で採択された。2000年代に入り日本がアフリカや太平洋島嶼国等から捕鯨支持の立場からの新規加盟を勧奨、対して鯨類の保護を重視する側からはEU加盟国を中心に新規加盟が増加したが、トータルでは捕鯨支持側の加盟が上回った結果であったと言える。
 2006年のIWC年次会合では、「セントキッツ宣言」の採択に先立ち日本より、捕鯨の再開に前向きな国だけを対象としたIWC正常化のための会合を開催するとの意向が表明されていたが、この「IWC正常化」会合が2007年2月に東京で開催された。その一方、NGOのPew財団(Pew Charitable Trusts)が中心となり、ニュージーランドのジェフリー・パーマー元首相が議長を務めたシンポジウムが2007年4月ニューヨークで開催された。このシンポジウムには捕鯨国、反捕鯨国、NGOなどが出席、袋小路に至った現状を打開するため、新議定書の策定やアイルランド提案の再考、RMSの構築などのアイデアが提示された。

ホガース議長のイニシアティブ

この議論を受け、2007年にアンカレジで開催された第59回IWC年次会合では議長を務めた米国のビル・ホガース氏より中間会合の開催が提案、これが了承された。2008年3月英国ヒースローで開催されたこの会合では、捕鯨支持国、反捕鯨国双方の信頼熟成を図るため議題は手続き問題に絞られ、米ハーバード大学ケネディ校のカレスタス・ジュマ教授など外部専門家3名が招聘され、議論が行われた。同2008年6月にチリのサンチャゴで開催された第60回IWC年次会合では、中間会合での議論を受け議事手続規則改正を行うことで合意、①できる限りコンセンサスでの合意を目指し、表決は最後の手段とすること(議事手続規則E.柱書)、②全ての附表修正案及び決議案は年次会合開催60日前までに加盟国に回章すること(議事手続規則J.1)、③会議直前に新規加盟した国が直ちに表決権を有することを防ぐため、加盟後30日を経過しなければ表決権を有さないこと(議事手続規則E.2.(b))、④加盟国のなかに仏語圏及びスペイン語圏が多数含まれていることを考慮し、英語に加え両言語も本会議での作業言語とし、同時通訳をつけること(議事手続規則N.1)、とされた(④の作業言語以外については2009年より実施)。さらに、「IWCの将来に関する小作業部会」を設置し合意パッケージ案を策定し2009年のIWC年次会議に提出することが合意された。

デソト提案

 同小作業部会の議長には2008年3月のヒースロー中間会合で外部専門家として招聘された元国連中東特別調整官のアルバロ・デソト(Álvaro de Soto)が就任、2008年9月と2008年12月に会合を開催した。ここでの議論を踏まえデソト作業部会議長は、最も重要な論点なっている(1)日本の小型沿岸捕鯨、(2)調査捕鯨、(3)サンクチュアリについて5年間の期限付きの暫定案を提示し、この5年間のうちに5年目以降の取り決めについてどうするか検討するという二段階のアプローチを提案した(18)。

(1) 日本の小型沿岸捕鯨
日本の沿岸のミンククジラO系群に対し、5年間の暫定捕獲枠を設定する。操業は太地、網走、鮎川、和田で合計5隻にのみ認められ、日帰りの操業とする。全ての鯨肉は地方で消費される。
(2) 調査捕鯨
5年の暫定期間中、調査捕鯨での捕獲頭数を大幅に減少させる。
① オプション1
南極海に関して、科学委員会のアドバイスの下、5年間で毎年20%ずつミンククジラ捕獲を減少させ、5年目でゼロにする。ナガスクジラとザトウクジラの捕獲は行わない。
② オプション2
科学委員会のアドバイスの下、南極海でミンククジラとナガスクジラ、北太平洋でミンククジラ、イワシクジラ、ニタリクジラ、マッコウクジラについて捕獲枠を設定する。
(3) サンクチュアリ
5年間の期限付きで南大西洋サンクチュアリを設定する。6年目以降にサンクチュアリを延長する場合はIWCで4分の3の賛成票を必要とする。

 デソト小作業部会議長の提案は2009年3月にローマのFAO本部で開催されたIWC中間会合で議論された。ここでオーストラリアから「調査捕鯨を終了するとのコミットメントがない限り妥協案には賛成できない」、ニュージーランドより「調査捕鯨が最も重要な問題。とりわけ南極海での調査捕鯨を可及的速やかに中止すべき」、ブラジルから「公海、最低限でも南極海からの捕鯨は段階的に廃止すべき」、EUを代表し発言したチェコも「調査捕鯨を終了させる提案を支持する」との意見が提示される一方、日本は南極海での調査捕鯨を最終的に廃止するオプション1は「IWCの精神に反する」と受け入れない姿勢を示すなど、調査捕鯨が妥協案で最も重要な要素となることがより明瞭となった(19)。
 2009年6月ポルトガル自治領のマデイラ島で開催された第61回IWC年次会合ではオーストラリアより、科学委員会が鯨類の科学調査に関する優先順位等を行い、捕獲を伴う調査は科学委員会の承認がない限り認められるべきではないとする提案を提示、英国、メキシコ、チリ、ブラジル、アルゼンチンがこの提案を歓迎するとともに調査捕鯨問題についてより詳細な議論が必要とする一方、日本は調査捕鯨の段階的廃止は妥協案策定プロセスを破壊するとして強く反対、アイスランド、ノルウェー、韓国も懸念を表明した(20)。同年のIWC年次会合では小作業部会をもう1年延長して設置するとともに、小作業部会の作業を補助するサポート・グルーブの設置が合意された。メンバーにはアンティグア・バーブーダ、豪州、ブラジル、カメルーン、ドイツ、アイスランド、メキシコ、ニュージーランド、セントキッツ、スウェーデン、米国が選ばれ、同グループ議長にはニュージーランドのジェフリー・パーマー(Geoffrey Palmer)元首相が就任した。なおホガースは同年でIWC議長を退任、後任にはチリのクリスチャン・マキエラ(Cristian Maquieira)が、副議長にはアンティグア・バーブーダのアンソニー・リバプール(Anthony Liverpool)が選任された。

マキエラ議長・リバプール副議長案

 サポート・グルーブは2009年10月(於サンチャゴ)、12月(於シアトル)、2010年1月(於ホノルル)で会合を開催、ここでの議論に基づき合意素案が策定された。この妥協案は2011年から20年の暫定期間を設定し、その期間をカバーするもので、骨子は以下の通りである(21)。

(1) 全ての捕鯨をIWCのコントロール下に置く。10年の暫定期間の間、調査捕鯨や異議申立てに基づく一方的に決定した捕獲を捕鯨国は行わない。
(2) 捕鯨は現在時点で操業を行っている国に限定する。
(3) 10年間の期限付きで南大西洋サンクチュアリを設定する。
(4) 10年間の暫定捕獲枠を設定する。捕獲頭数は現在のそれより大幅に削減するものとし、もし科学委員会により捕獲頭数削減が提案された場合、これを行う。
(5) 商業捕鯨モラトリアムは維持する。
(6) IWC本会議を隔年開催とする。
(7) 本会議の下部機関として、①科学委員会、②保存計画委員会、③管理遵守委員会、④財政運営委員会、を設置する。

 チリでの地震のため会議を欠席したマキエラ議長に代わり、リバプール副議長が議長役を務めるなか、2010年3月2日から4日にかけて小作業部会がフロリダで開催され、この場でサポート・グルーブ議長であるパーマーより合意素案が紹介された。パーマーは①10年の暫定期間に適用される附表修正提案を作成したこと、②この10年の暫定期間を用い、そもそも商業捕鯨が容認されるべきか、調査捕鯨の援用根拠となっている条約第8条をどうするのか、異議申立てを認めるのかといった条約の改正を必要とする根本的な問題を話し合うようにすること、等の合意素案の意図を説明するとともに、10年の暫定期間に関する捕獲枠の数字は各国の意見の開きがあるため記入されていないが、現在の捕獲頭数より大幅に削減しなければならない、この機会を逃してしまえば、今後20年は妥協案の策定の試みはされないだろうと述べ、妥協案の成立の必要性を各国に強く訴えた(22)。
 小作業部会開催後サポート・グルーブはワシントンで4月に再び会合を開催した。しかし捕獲頭数をどのように設定するかについてサポート・グルーブ間でのコンセンサスはついに成立せず、結局妥協案の作成はマキエラ議長はとリバプール副議長に委ねられ、この結果作成された議長・副議長案が4月に公開された。この案では、南極海のミンククジラは最初の5年間(2011~2015)は年間400頭、次の5年間(2016~2020)は200頭、ナガスクジラは最初の5年間は年間10頭、次の5年間は年間5頭、北太平洋についてはミンククジラ年間160頭、イワシクジラ年間50頭、ニタリクジラ年間12頭、との頭数が示されている。捕獲枠は現行の調査捕鯨より大幅に削減されるが、最終的なフェーズアウトは盛り込まれなかった。妥協案発表後マキエラ議長は「交渉は極めて複雑で厳しいものになると思うが、ポジティブな結果に終わることを期待している」として何らかの合意が成立することを「楽観している」と期待を込めた(23)。

豪州、EU、ラテンアメリカ諸国の動向

 しかしサポート・グルーブ等を通じて策定された妥協案に対して、最も強硬な反捕鯨国の一つであるオーストラリアから強い反対の意思が表明された。3月に開催された小作業部会での席上でオーストラリアは、①全ての捕鯨についてタイムフレームを設け捕獲枠を削減し、南極海では5年以内に捕獲枠をゼロにする、②資源状況が脆弱なものについては直ちに捕獲をゼロにする、③サンクチュアリでの捕鯨を禁止する、⑥捕獲を伴うものも含め、科学調査をIWCの下で監督する、等を骨子とする対抗案を提示した(24)。同国はさらに2010年5月、日本の南極海での調査捕鯨は国際捕鯨取締条約に違反するとして国際司法裁判所に提訴した。
 2006年の「セントキッツ宣言」採択により危機感を有したEU諸国はIWC非加盟のEU諸国に対しIWC加盟を勧めるとともに、2007年12月にEU理事会は捕鯨問題に関する共通のポジションを策定、2008年のIWC以降EU加盟国は共通の方針で臨んでいた。2010年時点でIWC加盟EU諸国は25か国となり、法的拘束力を有するIWC附表修正をブロックできる4分1を超える最大勢力となっていた。
2008年11月にEU理事会が決定したIWC対処方針では、①調査捕鯨を終わらせる提案に賛成する、②長期的な保全状態の改善が見込まれ、かつ全ての捕鯨活動がIWCの管理下に置かれない限り、日本の小規模沿岸捕鯨等の新たな捕鯨のカテゴリーを設定する提案を認めない、等とされていた(25)。調査捕鯨の継続は受け入れられないとの立場である一方、沿岸捕鯨については含みを持たせたポジションであると言える。
 議長・副議長案が明らかになった後の6月11日に開催されたEU環境理事会では、デンマークなどがこれを支持するよう求めた一方、英国は「先住民による部分的な捕鯨以外は認められない」と主張、ドイツ、オーストリア、ベルギー、アイルランドも議長案へ反対するとの立場を表明(26)、この時点で意見の一致に至らなかった。「全ての捕鯨を終わらせるタイムテーブルを採択すべき」と主張するフランスのジャン=ルイ・ボルロー環境相も当時のEU議長国スペインに対し、こうした立場を取るよう働きかけを行った(27)。結果IWC年次会合直前にようやく決定したEUの共通方針では①南極海での全ての捕鯨は可及的速やかに合意されたタイムフレーム内で段階的に縮小し捕獲をゼロにする、②北半球での捕獲頭数を削減し、最終的な目的として合意されたタイムフレーム内で商業捕鯨モラトリアムに合致しない捕鯨を終了するようにする、③鯨肉の国際取引を行わない、等がオープニング・ステートメントに盛り込まれた(28)。一切の商業捕鯨は認められないという英国やフランスなどの主張の結果、北半球でも捕鯨の禁止を求めるという意味で、より保護側に傾斜したものとなっている。他方、これはあくまでも長期的な目標であることから、ゼロ以外の捕獲枠も容認し得るものとなっている。デンマークやスウェーデン等穏健派諸国の意向を汲んでいるとも解釈されよう。
 反捕鯨国側でEUに次いで大きな勢力に成長していたのがラテンアメリカ諸国である。2005年11月、ラテンアメリカのIWC加盟7カ国(アルゼンチン、ブラジル、チリ、メキシコ、コスタリカ、ペルー、パナマ)及び非加盟2カ国がアルゼンチンのブエノスアイレスで国際捕鯨問題に関する会合を開催、鯨類の非致死的利用、調査捕鯨の廃止等を謳った「ブエノスアイレス宣言」を採択、以降IWCでは「ブエノスアイレスグループ」として共通のポジションを取るようになったからである。
2010年6月に開催されるIWC年次会合に際しても「ブエノスアイレスグループ」として共通の方針を立てるため、5月にコスタリカで会議が開催された。ラテンアメリカ14か国から計25のNGOも集結、議長・副議長案に対し「重大な懸念」を表明、むしろオーストラリアの対抗提案こそ推進すべきであるとの声明を発表した(29)。こうしたNGOの声を受け、議長・副議長案は「ブエノスアイレスグループの期待を遥かに下回る」とし、暫定期間の10年のうちに南極海での捕鯨を段階的に削減し最終的にゼロとすることが妥協の「必須条件(sine qua non)」とする共同ステートメントを発表するに至った(30)。チリ国内でも上院議員2名がマキエラ議長の解任を要求(31)、結局マキエラは6月に開催されたIWC年次会合を「病気」のためとして欠席することになった。

第62回IWC年次会合(2010)

 2010年6月21日からモロッコのアガディールで開催された第62回IWC年次会合には、今度こそ何らかの妥協案が成立するのではないかとの期待から、日本はもとより各国から多数の報道陣が詰めかけるなか開催された。民主党への政権交代に伴い、日本からも舟山康江政務官が代表団に加わった。もとよりNGOも多数参加、シンポジウム開催等により双方の歩み寄りを促してきたPewは会場で扇子を配布するなど、場を盛り上げた。
 会議に先立ちPew、グリーンピース及びWWFは共同ステートメントを発表、議長・副議長案については南極海サンクチュアリでの捕鯨中止や調査捕鯨を行わないこと等の修正が必要との立場を表明した(32)。これは一定の条件下であれば捕鯨の容認をも示唆するものであり、先住民捕鯨以外の一切の捕鯨を原則として認めないWDCS (Whale and Dolphin Conservation Society)や国際動物福祉基金(IFAW)等とは方針を異にするものであった。
 本会議では、欠席のマキエラ議長に代わりアンティグア・バーブーダのアンソニー・リバプール副議長が議事の運営に当たった。第1日目午前の開会セレモニーと議題の採択の後、議題は「IWCの将来」に移ったが、リバプール議長は合意を成立させるためとして休会を宣言、1日半を関係国間の非公式協議にあて妥協を模索することとなった。全加盟国を①ラテンアメリカ諸国(ブエノスアイレスグループ)、②EU諸国、③アフリカ諸国、④島嶼国、⑤オーストリア、ニュージーランド、モナコ、米国、モナコ、イスラエル、⑥スイス、ロシア、デンマーク、と6グループに分け、各グループについて日本、アイスランド、ノルウェー、韓国の代表がラウンド形式で交渉に当たった(33)。
非公開で行われた非公式協議で最大の論点となったのは、これまでの妥協案のための交渉でもそうであったのと同様、南極海での調査捕鯨継続の是非であった。オーストリア、EU、米国、ラテンアメリカ諸国は段階的廃止を求めたのに対し、「捕獲枠ゼロは認められない」(舟山康江農水政務官の発言)とする日本の間に、今回も妥協は成立しなかった(34)。反捕鯨国側が鯨肉は国内消費のみとするとすべきと主張したのに対し、アイスランドとノルウェーはこれに反対、ここでも合意は成立しなかった(35)。再開されたIWC本会議では1年間の冷却期間を置いて仕切り直しをすることが了承されたのみで、「IWCの将来」プロセスは事実上破綻するに至った。
 上記でも示されたように、この妥協案成立のためのカギとなったのはサンクチュアリに指定されている南極海での捕鯨をゼロにするか否かであり、もしこの条件を日本側が受け入れれば、2010年の段階で妥協の成立はあり得た可能性がある。Pew代表のスー・リーバーマンは「南極海鯨類サンクチュアリでの捕鯨を段階的に廃止することに関し日本が十分な柔軟性を欠いていたことが、合意成立を妨げた」と論評(36)、サポート・グループの議長としてこの「和平交渉」に深く関与したニュージーランドのパーマー元首相も「多くの反捕鯨国が感情的に抵抗して、冷静で理性的な分析や議論は不可能になった(37)」「日本は真のフレキシビリティと妥協に対する真の意思を示した(38)」としつつ、「調査捕鯨の維持という原則論に立ち、数字にこだわり過ぎた点はいただけない。…南極海での捕鯨をあきらめれば、沿岸捕鯨という実りを得られるかもしれない(39)」と日本の対応にも苦言を呈している。
 日本がこの段階で南極海からの捕鯨操業撤退というカードを切ることができなかった理由の一つとしては、オーストラリアなど強硬な反捕鯨国は商業捕鯨を一切認めておらず、ここで南極からの撤退によって太平洋での操業が暫定的に可能となったとしても、最終的には捕鯨の中止に追い込まれてしまうのではないかとの恐れがあったとも考えられよう。また、会議の交渉担当者であった森下丈二IWC日本政府代表が「反捕鯨派の立場はそもそも理不尽であり、一歩も譲る必要はないという思いが強い。妥協の模索は弱腰外交の表れであり、原理原則を貫き、妥協はおろか、反捕鯨国側の提案や試みに対してはすべて反対すべしという姿勢である」と指摘しているように(40)、一部の国会議員や関係者などから表明される強硬論が妥協を阻んだとも言えよう。

5. 小結

 以上簡単に1990年代後半から2010年までのIWCでの妥協案策定のための交渉を振り返ってみた。これら妥協案のなかでもアイルランド提案は、穏健な反捕鯨国はもとよりニュージーランドや英国からも交渉の用意があるとの姿勢が示されており、「南極海撤退の代わりに200カイリ内での操業を認める」との案が成立する可能性は相対的にではあるが高かったのではないかと想像される。他方2010年までの「IWCの将来」プロセスでは、ブエノスアイレスグループの結成やEUの共通ポジションの策定により立場の固定化が進み、妥協案の策定は相対的に困難となったと考えられる。しかしながら、2010年の交渉でも「南極からの撤退」が最大の論点となっており、これを受け入れていれば沿岸での商業捕鯨が再開された可能性は十分考えられる。「調査捕鯨中止、南極からの撤退」というカードを、日本側は効果的に利用することができなかった、と捉えられよう。
 2010年の「IWCの将来」プロセスの挫折以降、商業捕鯨を求める側と反捕鯨国との歩み寄りのための真摯な外交努力は試みられなかった。日本側は2014年以降、「クジラと捕鯨に関する立場の違いに起因する本質的な問題を議論」するとし、書面で反捕鯨国側に捕鯨問題に関する自国の基本的な態度の表明を求めるなどの努力を行ったとしている(41)が、基本的立場の相違や妥協のための最大の問題点がどこにあるかは2010年までの交渉で既に明白であり、「本質的な議論」アプローチは時間を無為に費やしたのみであった。
 こうしたなかでも捕鯨母船「日新丸」の老朽化が時を追って進み、代船建造の見込みも立たない。推進母体の日本鯨類研究所と日本捕鯨協会は2010年11月以降水産庁OBの役員受け入れを行っておらず、最悪なくなったところで役所に実害はない。そこで公海からの撤退を決断した、これが政策担当者の本心の一端なのではなかろうか。
 日本は2019年7月にIWCから脱退することになるが、国連海洋法条約では鯨類の管理は「適切な国際機関を通じて」行わねばならないと規定されている(第65条)。北太平洋で地域的鯨類管理機関を設立する試みは過去にも試みられてきたがいずれも失敗しており、設立に成功する可能性は極めて低い。こうしたなか排他的経済水域内だけであれ商業捕鯨を再開すれば、小松正之・元IWC日本政府代表代理が指摘するように「一種の違法、無規制、無報告(IUU)状態であると批判する国か非政府組織(NGO)が必ず現れる」であろう(42)。小松元代表代理のみならず島一雄元IWC日本政府代表も脱退という決定を「無責任の誹りは免れない」と批判している(43)。捕鯨の継続を支持する立場に立ったとしても、この脱退で失うものは多く、得るものは少ない。
 脱退で得られた数少ないものの一つと言えるのが、この政策判断に対する国内的支持である。与党は脱退をむしろ推進する側に回り、外務省の実施した世論調査では7割近くが回答者が脱退を評価している(44)。「IWCからの堂々脱退」というナショナリズム的レトリックの賜物であったろう。しかしながら脱退を主導した二階俊博自民党幹事長自身が述べている通り、捕鯨を推進する側から見ても、「堂々脱退」の真相は「まったくの惨敗(45)」としか呼べないものだった。
 必要だったのはナショナリズム的レトリックではなく、IWCを通じて沿岸捕鯨を認めさせるべく交渉を尽くすことではなかったのだろうか。そしてその際、「調査捕鯨の中止」「南極海での操業撤退」「排他的経済水域内のみでの操業」といったオプションを外交交渉におけるカードとして用いるべきではなかったのだろうか。結局のところ日本側はこれら全てのカードを自ら捨て去り、何の見返りもなく自ら交渉のテーブルから降りてしまったとも言えよう。外交的失敗との評価は免れないであろう。

脚注
(1) 「日本、商業捕鯨7月から再開 IWC脱退を正式表明」『水産経済新聞』2018年12月27日。
(2) IWC, “Report of the Working Group on the Implementation Review for Western North Pacific Common Minke Whales,” Journal of Cetacean Research and Management, Supplement No. 15, p. 120, Table 5.
(3) 森下丈二、佐々木芽生「日本はなぜ国際捕鯨委員会から脱退したのか 」『情報・知識&オピニオンimidas』、2019年2月19日。https://imidas.jp/jijikaitai/a-40-132-19-02-g712#header
(4) 『みなと新聞』2019年2月28日。
(5) IWC, 49th Annual Meeting (1997), Verbatim Record, pp. 29 – 30.
(6) Ibid., pp. 30 – 37.
(7) Ibid., p. 36.
(8) 「20日開会のIWC総会 公海での捕鯨全面禁止提案の動き 調査捕鯨も!?関係者ショック 反捕鯨国に脱退求め、反撃も」『東京新聞』1997年10月20日付。
(9) 「公海捕鯨禁止、断固阻止 自民党捕鯨議員連盟 アイルランド提案へ包囲網 日本の主張を貫徹」『みなと新聞』1997年10月9日。
(10) 「鯨公海聖域案に反対 ノルウェー漁業相が表明」『水産経済新聞』1998年2月20日。
(11) IWC, Verbatim record of 50th Annual Meeting, p. 163.
(12) Ibid., p. 664.
(13) Ibid., pp. 166-167.
(14) 岡本純一郎水産庁漁政部参事官の事前説明会での発言。「IWC年次会合控え 田中会長捕鯨再開へ不退転の決意 大阪で事前説明会開催」『みなと新聞』1998年4月26日付。
(15) 島一雄IWC日本政府代表の発言。「「科学的根拠」「条約」を重視 島・日本政府代表 IWC会議へ基本姿勢」『水産経済新聞』1998年4月23日。
(16) 八木信行水産庁資源管理部遠洋課課長補佐の発言。「科学に基づき地道に 大阪でもIWC説明会」『みなと新聞』1998年4月21日。
(17) RMSパッケージの内容と2004年開催の第56回IWC年次会合での議論については以下を参照。IWC, Annual Report of the International Whaling Commission 2004 (Cambridge: IWC, 2005).
(18) IWC, “Annual Report of the International Whaling Commission 2009,” pp. 70-71.
(19) Ibid., pp. 58-62.
(20) Ibid., pp. 10-11.
(21) “Chair’s Report to the Small Working Group on the Future of IWC,” IWC/M10/SWG 4.
(22) IWC, “Report of the fourth meeting of the SWG on the Future of the IWC,” IWC/62/6 Rev, Annex E.
(23) “Head of IWC optimistic on whaling deal,” Associated Press, May 27, 2010.
(24) Australia, “The Future of the International Whaling Commission: An Australian Proposal,” IWC/M10/SWG 5.
(25) European Union, “Council decision establishing the position to be adopted on behalf of the European Community with regard to proposals for amendments to the International Convention on the Regulation of Whaling and its Schedule,” COM(2008) 711 final, November 6, 2008.
(26) 「EU環境相理事会 商業捕鯨の一部再開案に反対意見(ロイターES=時事)」『水産経済新聞』2010年6月15日。
(27) Ministry for Ecology, Energy, Sustainable Development and Marine Affairs, “International Whaling Commission – Communiqué issued by the Ministry for Ecology, Energy, Sustainable Development and Marine Affairs, responsible for Green Technology and Climate Negotiations,” June 21, 2010.
(28) Opening Statement by Spain on behalf of the EU and its member states, IWC/62/OS Member Governments, pp. 23-25.
(29) Elsa Cabrera and Juan Carlos “Strategic Civil Society Victory: Latin American Countries Reject Whaling Proposal,” n.d., Centro de Conservación Cetace. http://www.ccc-chile.org/articulo-237-849-strategic_civil_society_victory_latin_american_countries_reject_whaling_proposal.html
(30) Buenos Aires Group, “VII Meeting of the Buenos Aires Group: Santo Domingo de Heredia, Costa Rica, May 18 to 20, 2010.”
(31) Aaron Cantu, “Chilean Senators want International Whaling Commissioner ousted,” MecroPress, June 11, 2010. https://en.mercopress.com/2010/06/11/chilean-senators-want-international-whaling-commissioner-ousted
(32) John Vidal, “Greenpeace and WWF give conditional support to commercial whaling plan,” The Guardian, June 21, 2010.
(33) 「アガディールIWC グループ協議、バイ協議通じ合意形成へ努力」『みなと新聞』2010年6月24日。
(34) 土佐茂生「IWC深まる溝 2日目も休会に」『朝日新聞』2010年6月23日。
(35) 会川晴之「IWC総会商業捕鯨先送り 議長案隔たり埋まらず」『毎日新聞』2010年6月23日。
(36) Marlowe Hood, “Japan blamed for collapse of whaling talks; Groups at stalemate,” National Post, June 24, 2010.
(37) 「苦くても沿岸捕鯨の実とれ IWCニュージーランド代表ジェフリー・バルマーさん」『朝日新聞』2010年7月23日。
(38) Richard Black, “Whaling 'peace deal' falls apart,” BBC, June 23, 2010. https://www.bbc.com/news/10389638
(39) 「苦くても沿岸捕鯨の実とれ IWCニュージーランド代表ジェフリー・バルマーさん」『朝日新聞』2010年7月23日。
(40) 森下丈二、岸本充弘「商業捕鯨再開へ向けて-国際捕鯨委員会(IWC)への我が国の戦略と地方自治体の役割について」『下関市立大学 地域共創センター年報』第11号(2018)、73頁。
(41) 同上、72-77頁。
(42) 「小松正之元IWC政府代表代理に聞く㊤ 大局観欠くIWC脱退 EEZ内捕鯨も非難の恐れ」『みなと新聞』2019年1月9日。
(43) 島一雄「IWC脱退について思うこと」『漁業と漁協』2019年2月号、14 – 17頁。
(44) 「捕鯨再開で世論調査」『読売新聞』2019年4月18日。
(45) 産経新聞電子版2019年12月26日。https://www.sankei.com/life/news/181226/lif1812260040-n1.html


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IWC脱退による商業捕鯨再開は脆い前提に立っていないか? [クジラ]

 日本政府は2018年12月26日、国際捕鯨委員会(International Whaling Commission: IWC)への脱退通告を行いました。この通告は2019年6月30日に効力が発生し、これ以降日本はIWCの非加盟国となります。これにより、商業捕鯨を排他的経済水域内で再開するとしています。

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【国際捕鯨委員会第67回会合(2018年)の模様】

 しかしこれには国際法上の問題があります。日本も締約国となっている国連海洋法条約第五部「排他的経済水域」の第65条で「いずれの国も、海産哺乳動物の保存のために協力するものとし、特に、鯨類については、その保存、管理及び研究のために適当な国際機関を通じて活動する」と規定されています。つまり、排他的経済水域であったとしても、「適当な国際機関を通じて活動する」法的義務が存在します。
 これに対して水産庁などは「IWC科学委員会や本委員会にオブザーバーとして出席する」ことにより「適当な国際機関を通じて活動する」の義務を満たすと判断しています。しかし通常この条項は「国連海洋法条約の締約国はクジラの管理について、適切な国際機関に参加して、あるいは適切な国際機関の定めたルールに則って活動しなければならない」と解すべきものだとの主張が当然なされ得るでしょうし、そのような解釈が自然のように思われます。従ってIWCに参加せず、またそのルールにも服せずに排他的経済水域内で商業捕鯨を実施することは国際法違反、すなわち脱法操業、IUU漁業であると批判されることになるでしょう。
 また、日本のこの政策の担当者は、IWCではオブザーバー参加があたかも未来永劫無条件であるように誤解されているようにも思われますが、そうだとしたら政策判断として大変危ういと言わざるを得ません。
 オブザーバー参加に関する規定はIWCの設立条約である国際捕鯨取締条約の本文にも、4分の3の多数で改正が可能な附表(Schedule)にもありません。この規定は議事手続規則に存在します。
 現行の議事手続規則C.1(a)項では「条約の締約国でないいかなる国及び国際機関も、委員会にオブザーバーとしてすることができる」とされており、したがって他のIWC加盟加国の意向にかかわらず、オブザーバー参加ができます。
 しかしながら、議事手続規則は改正を行うことができます。そして、議事手続規則の改正は単純過半数で足ります(議事手続規則E.3(a))。
 つまり、議事手続規則を変更し、例えば「条約の締約国ではないが、条約の下で定められた規則に従っている国に対しては協力的非加盟国としてオブザーバー参加を認める(注:つまり、それ以外はオブザーバー参加を認めない)。協力的非加盟国であるかどうかは、IWCで決定する」としてしまうと、オブザーバーからも排除されてしまうことになってしまいます。
 「たとえ非加盟国であったとしても、当該海産種を管理する国際機関のルールを守らなければならないし、そうでなければ漁獲は認められない」という一般的ルールは公海の漁業資源管理のための枠組み条約的な役割を果たしている「国連公海漁業協定」にも定められています。
 すなわち、同協定第8条4項では「小地域的若しくは地域的な漁業管理のための機関の加盟国若しくはそのような枠組みの参加国又は当該機関若しくは枠組みが定めた保存管理措置の適用に同意する国のみが、当該保存管理措置が適用される漁業資源を利用する機会を有する」と定められています。
 この条約は魚類、軟体動物、及び甲殻類が適用対象であり(条約第1条1項(c))、鯨類は適用の対象ではないため、上記条項の適用は受けませんが、「IWCでも国連公海漁業協定の趣旨を汲み、このため議事手続を改正するのだ」と改正を正当化することが可能ではないかと思われます。
 オブザーバー参加が認められず、かつIWCに代替するような「適当な国際機関」を北太平洋で設立し日本がその加盟国となっていなければ、排他的経済水域限定の商業捕鯨操業さえ、その道を断たれる可能性があります。議事手続規則を改正してオブザーバーから排除するというのは、ある意味で容易に考えつくことができる戦術をIWC加盟国が一つも思い至らないとは想像しがたいようにも思われます。したがって、「オブザーバー参加による国連海洋法条約第65条を満たす」作戦は極めて危うい前提に上に立っていると言わざるを得ないでしょう。
 

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日本のIWC脱退:外交的失敗の帰結だ【共同通信配信コラム記事】 [クジラ]

先日共同通信から配信され、地方紙各紙に掲載された日本の国際捕鯨委員会(IWC)脱退に関するコラムを転載しました。もしよろしければご参考までに。

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【2018年9月に開催された国際捕鯨委員会本会合の模様】

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視標「IWC脱退」
国際社会で信頼なくす 
 外交的失敗の帰結だ  早稲田大学客員准教授 真田康弘 

 日本政府は国際捕鯨委員会(IWC)からの脱退を表明した。これ以上IWCに留まっても商業捕鯨再開の道筋が描けないので脱退で再開を図るという。しかし脱退は南極海の調査捕鯨からの撤退を意味し、南極海での商業捕鯨再開を長く求めてきた日本にとっては、IWCでの外交的失敗の帰結であるとも言える。
 そして日本周辺での商業捕鯨の実施も容易ではない。政府は排他的経済水域(EEZ)と領海内でのみ商業捕鯨を再開するとした。だが、日本も加盟する国連海洋法条約では、鯨類の保全管理は「適当な国際機関を通じて活動」しなければならないと規定している。従って日本のEEZや領海内でも商業捕鯨を再開する場合、IWCに代わる国際機関の設立するなどの対応が必要になる可能性が高い。
 カナダはIWC非加盟だが、先住民に年数頭のホッキョククジラ捕獲を許可しており、IWCに報告書等を提出。これにより「適当な国際機関を通じて活動」したこととしている。
 日本も再開後はIWCにオブザーバーとして参加し、報告書などを提出することで上記条項を満たすと主張すると思われるが、先住民の年数頭程度の捕獲と、100頭を超えるような商業的な捕獲とは規模や意味合いが異なり、EEZや領海内であっても国際社会からの批判は免れない。国際法的にも疑義が生じる。
 日本は「国際社会における法の支配」を外交の大原則としており、この意味からも脱退は、国際社会での日本の信頼性を低めこそすれ、高めることにはなり得ない。
 IWCの設立根拠である国際捕鯨取締条約第8条は、締約国政府が「科学的研究のため」であれば独自に捕獲許可を発給できると規定しており、日本はこれまでこの条項を援用し南極海での調査捕鯨を実施してきた。だが、脱退すると、これができなくなる。
 「南極海など公海での調査捕鯨を中止し、捕鯨はEEZ内に限定する」という案は約20年前に妥協案として当時のIWC議長から提起されたことがある。これが、IWCで成立し得る数少ない妥協案だと多くの識者が指摘していた。
 IWC内部にいても得られた可能性があることを、脱退で実現したというのは外交の失敗だと言える。南極海の捕鯨から撤退し、活動を大幅に縮小するという外交的敗北を「IWCからの堂々退場」というナショナリズム的レトリックで言い換え、糊塗(こと)することは正しい姿勢とはいえない。
 日本国内での捕鯨賛成論は純粋な「捕鯨支持」というより、ナショナリズム的感情に基づく「反・反捕鯨」と言うべき部分が少なくない。脱退はそうした心情を満たすものとはなるだろう。だが、その結果、得られるものは少なく、失うものは大きい。

【「静岡新聞」2018年12月28日付・「宮崎日日新聞」2018年12月27日付等掲載】
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イワシクジラワシントン条約:ワシントン条約第70回常設委員会報告 [クジラ]

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【ワシントン条約第70回常設委員会の模様】

 この2018年10月にソチで開催されたワシントン条約常設委員会には私もオブザーバーとして出席しましたが、この委員会では日本が調査捕鯨として公海で捕獲しているイワシクジラの国内水揚げが議題となり、ワシントン条約違反と認定されました。これにより翌2019年2月1日までに日本は是正措置を条約事務局に報告し、5月よりスリランカで開催されるワシントン条約締約国会議と併せて開催される次回常設委員会で日本の是正措置を審議する予定です。
 上記ソチ開催の常設委員会のイワシクジラ問題に関する審議の模様と結果についての小論をJWCS(野生生物保全論研究会)のニューズレターに寄稿し、このほどウェブにアップされました。以下からアクセスすることができます。ご参考までに。
 
https://www.jwcs.org/data/1812_sanada.pdf
【真田康弘「イワシクジラとワシントン条約:第70 回ワシントン条約常設委員会参加報告」『JWCS通信』第85号(2018年)、2~7頁】

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【赤の広場】




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国際捕鯨委員会第67回会合と日本提案 [クジラ]

 9月10日(月)から14日(金)までブラジル・フロリアノポリスで開催されていた国際捕鯨委員会(International Whaling Commission: IWC)第67回総会が終了しました。

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【国際捕鯨委員会第67回総会の模様。提供:佐久間淳子氏】

 総会ではブラジルなどが20年にわたり採択を求めてきた南大西洋サンクチュアリ(鯨類保護区)提案は賛成39、反対25、棄権3と採択に必要な4分の3の多数を得られず否決された一方、同じくブラジルなどが提案した商業捕鯨モラトリアムの重要性を再確認し「致死的調査は不必要」とした「フロリアノポリス宣言」などが賛成40、反対27と採択に必要な過半数の多数を得て可決。また先住民生存捕鯨の捕獲枠の改訂がオーストラリアやニュージーランドといった原則として商業捕鯨を一切認めない立場の国も賛成する中賛成58、反対7、棄権5と採択に必要な4分の3の多数を得て可決されました。

フロリアノポリス宣言表決.jpg 
【フロリアノポリス宣言表決結果】

 ちなみにIWCでは法的拘束力のある付表の改正(サンクチュアリ提案や捕獲枠の改訂提案等)は採択に4分の3、IWCの組織内部的な事項以外については法的拘束力がない決議案は過半数の多数で可決されます。

 この会議で日本側は「The Way Forward」と題するパッケージ提案を上程しました。これは現在のIWCが商業捕鯨の再開を認めず機能不全に陥っているとの認識の下、「持続可能な捕鯨委員会」を総会の下部機関として設立、現在付表の修正は総会で4分の3の多数が必要なところ、これら下部機関でコンセンサスで合意された提案は総会で過半数の多数が得られれば可決されるよう条約を改正(このため条約改正のための全権会議を招集)、持続的な利用が可能と認められたクジラについては商業的な捕獲を可能にするよう付表を改正する、という内容でした。なお「持続可能な捕鯨委員会」設立及び条約改正全権会議を求めるものは過半数の多数で可決が可能な決議案です。

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【提案を説明する日本政府代表】
 
 内容が決議案から付表の修正、さらには条約改正までを含む極めて包括的なもので、日本側はこの提案のコンセンサスを目指すとの意向でした。今回のIWCは数十年ぶりに日本人が議長を務めることから、日本国内の一部には商業捕鯨の再開に期待感も広がっていたようで、鈴木俊一・自民党捕鯨議員連盟会長が「今回のIWCが商業捕鯨復活に向けて画期的な第一歩となるよう議連としても見守ってゆきたい」と代表団に発破をかけ(水産経済新聞2018年8月9日)議員を現地に派遣するなど、採択を目指し並々ならぬ意欲で日本側代表団は会議に臨んだようです。

 しかしこの提案を一見して、残念ながらなぜ採択の見込みが絶望的なものを出してくるのか、非常に不思議に思っていました。総会でオーストラリア代表が、「この提案は、これが失敗に帰すということはっきりわかっていて、失敗することを意図して考えられ提案されたものであるとの結論する他ない(It is hard to avoid the very difficult conclusion that the proposal was designed and brought forward with the intent of clear knowledge that it will be failed.)」と発言していましたが、日本提案の状況を的確に言い表していると考えられます。かつてIWC政府代表代理として捕鯨交渉のタフ・ネゴシエイターとして名を馳せた小松正之・東京財団研究所上席研究員も「率直に言って、非現実的」と批判されていました(みなと新聞2018年9月10日)。実際、コンセンサスどころか、日本提案は賛成27、反対41、棄権2と過半数を大きく割り込み否決されました。

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【日本提案に対し「わざと失敗することがわかっていて提案しているのでないか」と批判する豪州代表ニック・ゲールズ博士。代表の発言の後会場の一部から拍手が起こりました。】

 そもそもこの提案が正式に公表されたのは7月と総会の僅か3か月前。実際に総会でも「3か月前に突然出てきた」との発言が複数よりあったことから、実際に各国に提示されたのも時期的にあまり変わらなかったようです。ハードルが高い提案であればあるほど、十分事前に提示して各国に対して説明と根回しが必要なはずで、これでは外交手法として残念ながら稚拙と言わざるを得ません。

 たまたま提案が公表された7月にワシントン条約動物委員会に出席していたのですが、たまたま会議にIWCでは最も保護的なポジションを取るあるラテンアメリカ諸国のIWCにも来ているという代表に日本提案をどう思うかと聞いたところ、到底賛成できないとのことでした。オーストラリアはもとより会議に先立って「日本提案には絶対反対」の立場を明確にしていましたし、IWCに出席するNGOも強く反対の立場でした。ラテンアメリカ諸国やEU諸国はこうしたNGOの意見が強く反映されることから、もとより採択される見込みは全くなかったと言ってよいでしょう。

 日本側は、「この日本側の提案は一回限りのものであり、もし採択されなかった場合は次回の総会には出さない。もしこの提案が否決されたならば、IWC脱退も考えざるを得ない」と交渉を試みていたようにも側聞しました。しかし、この提案に合意が得られなかった場合脱退も選択肢かとの質問に対し、水産庁の担当者は「その議論は時期尚早」と業界紙のインタビューで答えていました(みなと新聞2018年7月31日)。もちろん一般の外国人は日本語はわからないでしょうが、東京に在外公館を有している国々は関係する報道はくまなく読んで適宜本国に伝達しているはずですので、これでは「脱退を検討する」とのポジションはブラフ(はったり)であるとあらかじめシグナルを送っているに等しいと言えます。残念ながらやはり交渉手法として稚拙と言わざるを得ないでしょう。

 日本案否決後、谷内正明農林水産副大臣は「あらゆる選択肢を精査せざるをえない」と発言し、「IWCからの脱退の可能性に言及」と報じられました。

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 問題となったところを、以下そのまま見てみましょう。

“We continuously believe the potential of IWC as a forum of global governance for the conservation and management of whale resources. And therefore, we wish to continue in cooperation with the IWC in various ways to achieve the objective of the Convention enshrined in the Convention. However, if scientific evidence and diversity are not respected, if commercial whaling based on science is completely denied, and if there is no possibility for the different positions and views to coexist with mutual understanding and respect, then Japan will be pressed to undertake fundamental reassessment of its position as a member of the IWC where every possible option will be scrutinized.”

「我々は鯨類資源の保全管理のフォーラムとしてのIWCの可能性を引き続き信じております。従いまして、この条約の目的を達成するため、様々なかたちでIWCとの協力を引き続き行っていきたく思っております。しかしながら、もし科学的証拠と多様性が完全に否定され、もし科学に基づく商業捕鯨が完全に否定され、そしてもし異なった立場や見解が相互の理解と尊重の下に共存する可能性がない場合、日本はIWCの加盟国として立場を抜本的に再検討せざるを得ないこととなり、全てのオプションを精査せざるを得なくなるでしょう」


 以上のステートメントでは、「鯨類資源の保全管理のフォーラムとしてのIWCの可能性を引き続き信じ」、「様々なかたちでIWCとの協力を引き続き行っていきたい」とされている一方、 「全てのオプションを精査せざるを得ない」とのくだりのまえにif(もしも)が3つもついており、しかも「脱退」の文言は入っていません。少なくとも現時点では脱退の可能性は大きな選択肢とは到底言えないと考えられます。

 ちなみに日本が「脱退の可能性」に初めて言及したのは今から約四半世紀前の1992年のことです。

 この年開催されたIWCでは、商業捕鯨再開にさらに条件を付す決議案が圧倒的多数で採択されました。この決定を受け、日本政府代表団の島一雄代表(水産庁次長)は「もし科学的証拠に基づく議論が尊重されないとすれば、IWCは本来の機能を停止したと言わざるを得ない」とした上で「(このままでは)IWCからの脱退を求める国内の圧力は強まるばかりだ」と指摘、国内政治・世論の動向次第では、脱退も検討せざるを得ない、との認識を明らかにしています(読売新聞1992年7月4日「日本がIWC脱退を示唆 不公平な運営非難 政府代表演説 総会が閉幕」)。

 この1992年の島代表のステートメントでは「脱退」の文言に言及されており、今年のIWCでの谷内副大臣の発言よりも意味的に強い内容を含んでいると言えます。もとより少なくともこのころから日本は「全てのオプション」を精査している筈であり、したがって四半世紀以上「全てのオプション」が検討され続けてきたとも言えるでしょう。
 国際捕鯨取締条約第8条で科学調査目的の捕獲については条約規制の適用除外とすると定められており、日本はこれを援用して南極海と北太平洋で調査捕鯨を実施しています。また、国連海洋法条約は第65条で「鯨類については、その保存、管理及び研究のために適当な国際機関を通じて活動しなければならない」と規定されています。このため、今回IWC議長を務めた森下丈二・IWC日本政府代表が指摘しているように「IWCを抜けた時点で、南極海での捕鯨が、事実上許されなくなる。南極海を捨てる覚悟がある時のみ、この(脱退という)選択肢を探れる」と言えます(みなと新聞2016年12月16日)。

 さて、余談なのですが、IWC総会は毎回のごとく時に討議がヒートアップし、熱い議論が行われることがあります。特に商業捕鯨の再開やサンクチュアリ提案などに関しては今回もそうでした。

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【日本提案に対してコメントするアルゼンチン代表】

 反捕鯨国はEU、ラテンアメリカ諸国、オーストラリア、ニュージーランド、そして常にどんな議題でも一家言有するモナコ、商業捕鯨再開支持側では日本、アイスランド、ノルウェー、アンティグア・バーブーダ、そして今回はセネガルが熱い論客でした。

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【熱弁するセネガル代表】

 数的に劣る日本側は勢力を増やすため新規加盟を促す作戦を取っており、この結果8月下旬に「日本から支援を受けた西アフリカのリベリアがIWCに加盟」しました(産経ニュース電子版。2018年9月5日)。ということで今回新規加盟のリベリアから2人代表が出席し日本支持側として発言してくれていたのですが、やはり正直クジラなどには関心がそれほど強くないからか、もう1人の自国代表が発言している時ですらスマートフォンに夢中。ある意味で現在のIWCのある側面を象徴するようにも思えました。

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【ブラジル提案に対して発言するリベリア代表】

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【発言終了後のリベリア代表。横のルクセンブルク代表もスマホに熱心です】

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ワシントン条約事務局、イワシクジラの水揚げが条約規定に反するとの報告書を発表 [クジラ]

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【イワシクジラ。出典:Wikipedia Commons

 2018年8月24日(金)、ワシントン条約事務局が日本のイワシクジラ調査捕鯨に伴う鯨肉の水揚げに関する報告書(SC70 Doc. 27.3.4)を発表しました。

 日本は現在北太平洋と南極海で調査捕鯨を実施しています。北太平洋で調査捕獲対象としているのはミンククジラとイワシクジラの2種類です。

 ワシントン条約では上記鯨種をともに附属書Ⅰに掲載されています。日本はこの掲載に関し、ミンククジラについては留保を付けて条約の適用を受けないことになっていますが、北太平洋のイワシクジラについては留保を付けておらず、条約の義務に服する必要があります。

 条約では附属書Ⅰに掲載された種については、「主として商業的目的」に利用される場合の輸出入並びに再輸出及び海からの持込みを行うことは認められていません(条約第3条)。ここでの「海からの持込み」とは、公海上での魚や海産種の漁獲・捕獲・採取などを指します。

 ここでの「主として商業的目的」の利用の解釈については、「非商業的側面が明らかに支配的である(clearly predominate)と言えない全ての利用は主として商業的性質を有すると見なされるべきで、付属書I掲載種の輸入は許可されるべきではなく、使用目的が明らかに非商業的であるとの挙証責任は輸入をする側が負う」との決議が日本も賛成する形で採択されています(Resolution Conf. 5.10 (Rev. CoP15))。

 昨2017年12月にジュネーブで開催されたワシントン条約常設委員会では、日本のイワシクジラ調査捕獲に伴う鯨肉の利用が、「主として商業目的」に該当しており、条約違反ではないかとの問題が審議されました。ここでは日本のイワシクジラ肉の持込みがワシントン条約上合法であるとの発言をした国は一か国もおらず、「条約違反だ」などとの厳しい声が相次ぎました。最終的に事務局が日本に調査団を派遣し、そこで得られた結果などをもとに報告書を作成し、その報告書を2018年10月に開催される次回の常設委員会で検討することになりました。

 今回発表されたのは、その報告書です。端的に言いますと、日本のイワシクジラ調査捕獲に伴うイワシクジラ肉の国内持込みはワシントン条約違反である旨を強く示唆する内容となりました。

 一応事務局の報告書では、①常設委員会が日本のイワシクジラの調査捕獲にともなう鯨肉持込みがワシントン条約違反であると判断する場合、②常設委員会が日本のイワシクジラの調査捕獲にともなう鯨肉持込みがワシントン条約違反ではないと判断する場合、の二通りの選択肢を用意して、常設委員会に下駄を預ける形式にはなっています。しかし、事務局は日本のイワシクジラ肉の日本への持込みは「主として商業的目的」に該当すると判断するとともに、もし常設委がワシントン条約違反ではないと判断する場合には、条約の諸規定やワシントン条約で採択された決議から逸脱することになる、と述べているため、事実上の一択になっています。

 日本の担当部局である水産庁は、「科学調査目的の捕獲は国際捕鯨取締条約で認められている。ゆえにこれはワシントン条約での「主として商業的目的」での利用に該当しない」と主張していました。

 しかしこれについて条約事務局は、「国際捕鯨取締条約の規定を遵守することは、ワシントン条約を遵守することとは別である。そもそも国際捕鯨委員会やその他のどの関係国際機関も、日本の調査捕鯨が国際捕鯨取締条約を遵守したものだと判断していないではないか」とばっさり事務局報告書10頁)。

 結論としては、日本の現在実施しているイワシクジラの「海からの持込み」の調査捕獲許可発給の形式等が適切でないので、これを是正するよう常設委に勧告するとともに、「常設委員会がどう判断するかによりけりだが」との条件を付けていますが、常設委が日本に対して「主として商業的目的」に該当するようなイワシクジラ肉の日本への持ち込みを停止するよう勧告することもあり得るだろう、また必要なら、日本に対してどのような是正措置を取ったかを来年2月までに報告するよう求める勧告することをあり得るだろう、との事務局案勧告を行っています(条約事務局報告書13頁)。

 10月にロシアのソチで開催される常設委員会は私もオブザーバーとして参加する予定ですので、この議論の行方をしっかりウォッチしてみようと思っています。

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国際司法裁判所(ICJ)捕鯨裁判・映像資料 [クジラ]

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【オランダ・ハーグの国際司法裁判所*】

 国際司法裁判所(International Court of Justice: ICJ)での調査捕鯨裁判の判決が下されてから早4年がたちました。

 国際司法裁判所というと、何か非常に遠いところにあって難解極まる法律議論を展開しているようにも思われますが、少なくとも調査捕鯨裁判についてはそういうわけではなく、「リーガルハイ」にも勝るとも劣らない、まさにドラマのような、いやドラマ以上にドラマチックな迫真の法廷劇が繰り広げられました。

 裁判の最大の見せ場となったのは、日本政府側の主張を弁護するために出廷したノルウェー人科学者のラース・ワロー博士に対するオーストラリア側からの反対尋問。ワロー博士の証言はこの裁判の帰趨を左右するものとなりました。

 国際法のエキスパートとして、その凄さを見せつけたのがオーストラリア側弁護人として訴訟に参加した豪州人のジェームズ・クロフォード教授(ケンブリッジ大学)。ユーモアを交えつつ相手側の主張を撃破し、演技力たっぷりな法廷での振る舞いは、まさに「クロフォード無双」とも言うべきものでした。彼はこの後国際司法裁判所の判事に就任しました。

 これに対して日本政府側が大枚はたいて雇った国際法の専門家は「私にも調査捕鯨の計算論拠がわからない」などまさにオウンゴール。

 国際司法裁判所の公用語が英仏語でオーストラリアの母語は当然英語であることから、日本側は法廷ではフランス語を主に用いるボンジュール作戦を展開したのですが、結果は判決の通り。うまくはいかなかったようです。

 この裁判は日本が当事国でありながら、ある意味で日本の不在が際立ちました。専門家として存分に調査捕鯨の科学的正当性を相手をやり込めるほどに主張すべき調査捕鯨をリードしていた日本人科学者の不在。そしてそれともかかわることですが、裁判における日本語の不在。国際司法裁判所規定第三十九条第三項では「裁判所は、いずれかの当事者の要請があったときは、この当事者がフランス語又は英語以外の言語を使用することを許可しなければならない」と定めているのですが。

 日本の捕鯨裁判の全面敗訴は作戦ミスにも依拠するところ、少なくないように考えられます。鶴岡公二・日本政府代理人が敗訴を受け安倍総理大臣に官邸に呼び出され、非常に強い叱責を受けたのはむべなるかなと言えるでしょう。

 ということで、以下捕鯨裁判のハイライトをまとめたビデオクリップ集(日英字幕付き)を以下からダウンロードできるようにしました。授業など教育用などにお役立てください。
 (注:英語版は650MB、日本語版も500MBと非常に重いため、ダウンロードに時間がかかります)

【ICJ捕鯨裁判ビデオクリップ集・英語字幕付き】

【ICJ捕鯨裁判ビデオクリップ集・日本語字幕付き】

 なお裁判の詳細については拙共著『クジラコンプレックス』に文書化しています。

【Amazon.co.jp「クジラコンプレックス」】


* Source: Wikipedia Commons, "Den Haag Peace Palace".



 
 
 
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イワシクジラ調査捕鯨が国際法(ワシントン条約)違反認定か?:第69回ワシントン条約常設委員会(2017.12)報告 [クジラ]

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【ワシントン条約第69回常設委員会(2017.12)が開催されたジュネーブ国際会議場すぐ近くにある国連欧州本部(パレ・デ・ナシオン)】

 2017年12月にジュネーブで開催されたワシントン条約(CITES)常設委員会にオブザーバー出席したのですが、この会議では日本のイワシクジラの北太平洋での調査捕獲がワシントン条約に該当するのではないかとしてほとんどの国がこれを問題視、日本政府側(担当は水産庁)は欧州はもとより中南米諸国やケニア、ニジェールといったアフリカ諸国からも非常に厳しい批判を浴びました。このままいくと、来年の常設委員会で日本はイワシクジラ調査捕獲に対して条約違反認定を受ける可能性が出てきました。先進国では前代未聞の事態です。
 条約違反認定された場合の最も厳しい措置はワシントン条約付属書に掲載された特定の種あるいは全ての種に対する取引停止勧告となります。全ての種の取引停止勧告を受けた場合、例えば付属書に掲載されている動物を動物園に外国から受け入れようとする場合、その外国からワシントン条約での取引停止勧告を理由として拒否されるということもあり得ることになります。
 なお、「商業捕鯨実施等のための鯨類科学調査の実施に関する法律」では第三条で、調査捕鯨は「条約その他の国際約束及び確立された国際法規」に基づかなければならないと定めているため、イワシクジラがワシントン条約違反認定された場合、国内法にも抵触することになります。


 こうした経緯についてIKAN発行のニューズレター『IKANet News』第69号(4~14頁 )に小文を書きましたので、以下転載します。掲載された原文はPDFファイルでこの文章の一番最後のリンク先からダウンロードできます。

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マニラでクジラ肉に遭遇 [クジラ]

 12月3日(日)から開催された中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)にオブザーバーとして出席するため、フィリピンのマニラに出張しました。

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【WCPFC本会議が開催された会議場の模様】

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「捕鯨と環境倫理」研究会発表資料 [クジラ]

本日(2017年11月19日)国立民族学博物館で開催された「捕鯨と環境倫理」研究会での私の発表分の報告資料をアップロードしました。以下のリンク先からダウンロードできます。

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