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IWC脱退による商業捕鯨再開は脆い前提に立っていないか? [クジラ]

 日本政府は2018年12月26日、国際捕鯨委員会(International Whaling Commission: IWC)への脱退通告を行いました。この通告は2019年6月30日に効力が発生し、これ以降日本はIWCの非加盟国となります。これにより、商業捕鯨を排他的経済水域内で再開するとしています。

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【国際捕鯨委員会第67回会合(2018年)の模様】

 しかしこれには国際法上の問題があります。日本も締約国となっている国連海洋法条約第五部「排他的経済水域」の第65条で「いずれの国も、海産哺乳動物の保存のために協力するものとし、特に、鯨類については、その保存、管理及び研究のために適当な国際機関を通じて活動する」と規定されています。つまり、排他的経済水域であったとしても、「適当な国際機関を通じて活動する」法的義務が存在します。
 これに対して水産庁などは「IWC科学委員会や本委員会にオブザーバーとして出席する」ことにより「適当な国際機関を通じて活動する」の義務を満たすと判断しています。しかし通常この条項は「国連海洋法条約の締約国はクジラの管理について、適切な国際機関に参加して、あるいは適切な国際機関の定めたルールに則って活動しなければならない」と解すべきものだとの主張が当然なされ得るでしょうし、そのような解釈が自然のように思われます。従ってIWCに参加せず、またそのルールにも服せずに排他的経済水域内で商業捕鯨を実施することは国際法違反、すなわち脱法操業、IUU漁業であると批判されることになるでしょう。
 また、日本のこの政策の担当者は、IWCではオブザーバー参加があたかも未来永劫無条件であるように誤解されているようにも思われますが、そうだとしたら政策判断として大変危ういと言わざるを得ません。
 オブザーバー参加に関する規定はIWCの設立条約である国際捕鯨取締条約の本文にも、4分の3の多数で改正が可能な附表(Schedule)にもありません。この規定は議事手続規則に存在します。
 現行の議事手続規則C.1(a)項では「条約の締約国でないいかなる国及び国際機関も、委員会にオブザーバーとしてすることができる」とされており、したがって他のIWC加盟加国の意向にかかわらず、オブザーバー参加ができます。
 しかしながら、議事手続規則は改正を行うことができます。そして、議事手続規則の改正は単純過半数で足ります(議事手続規則E.3(a))。
 つまり、議事手続規則を変更し、例えば「条約の締約国ではないが、条約の下で定められた規則に従っている国に対しては協力的非加盟国としてオブザーバー参加を認める(注:つまり、それ以外はオブザーバー参加を認めない)。協力的非加盟国であるかどうかは、IWCで決定する」としてしまうと、オブザーバーからも排除されてしまうことになってしまいます。
 「たとえ非加盟国であったとしても、当該海産種を管理する国際機関のルールを守らなければならないし、そうでなければ漁獲は認められない」という一般的ルールは公海の漁業資源管理のための枠組み条約的な役割を果たしている「国連公海漁業協定」にも定められています。
 すなわち、同協定第8条4項では「小地域的若しくは地域的な漁業管理のための機関の加盟国若しくはそのような枠組みの参加国又は当該機関若しくは枠組みが定めた保存管理措置の適用に同意する国のみが、当該保存管理措置が適用される漁業資源を利用する機会を有する」と定められています。
 この条約は魚類、軟体動物、及び甲殻類が適用対象であり(条約第1条1項(c))、鯨類は適用の対象ではないため、上記条項の適用は受けませんが、「IWCでも国連公海漁業協定の趣旨を汲み、このため議事手続を改正するのだ」と改正を正当化することが可能ではないかと思われます。
 オブザーバー参加が認められず、かつIWCに代替するような「適当な国際機関」を北太平洋で設立し日本がその加盟国となっていなければ、排他的経済水域限定の商業捕鯨操業さえ、その道を断たれる可能性があります。議事手続規則を改正してオブザーバーから排除するというのは、ある意味で容易に考えつくことができる戦術をIWC加盟国が一つも思い至らないとは想像しがたいようにも思われます。したがって、「オブザーバー参加による国連海洋法条約第65条を満たす」作戦は極めて危うい前提に上に立っていると言わざるを得ないでしょう。
 

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