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クロマグロの国際的管理:WCPFCとICCATの比較 [マグロ]

太平洋クロマグロの国際的管理は「中西部太平洋まぐろ類委員会(Western and Central Pacific Fisheries Commission: WCPFC)」等で行われています。大西洋については「大西洋まぐろ類保存国際委員会(International Commission for the Conservation of Atlantic Tunas: ICCAT)」という別の委員会があり、この委員会は大西洋クロマグロを管理しています。
以下の表が、WCPFCでの太平洋クロマグロの規制とICCATでの大西洋クロマグロの規制を比較したものです。

WCPFCとICCAT・クロマグロ規制.jpg

まず目標については
 WCPFC: 2024年までの10年間で60%の確率で「歴史的中間値(初期資源量比7%相当)」に回復
 ICCAT: 2007年から2024年までの15年間で60%の確率でBMSYに回復。
です。

BMSYという言葉は、国立研究開発法人水産研究・教育機構「国際漁業資源の現況」の用語解説での定義を用いると「資源変動のあるなかである特定の管理方策(一定漁獲死亡率(漁獲率)あるいは、一定率の取り残し等)で長期的に実現可能な最大の漁獲量の平均を達成可能な資源量」を意味します。
この水準に達しているなら資源は健全で水産資源の持続的利用にとって望ましいとして国際的に広く用いられている水準です。
MSY.gif
同じく同機構の用語解説にある図表が上記のものです。この図では、BMSYの水準は資源が元あった水準の概ね半分程度としてイメージされています(BMSYの水準は個々の資源によって異なります)。上記の詳細については、出典元である以下のサイトをご覧ください。
http://kokushi.fra.go.jp/index-1b.html
【水産教育・研究機構「国際漁業資源の現況・用語解説」】

漁獲量制限については
 WCPFC: 30kg未満の小型魚を2002-04年水準で半減。30kg以上の魚の漁獲量は2002-04年水準に制限。
 IATTC: 30kg未満小型魚は原則漁獲禁止。30kg以上の魚については、2007年32,000t(公式統計。ICCAT科学委員会は実漁獲約61,000tと推定)から最大12,900t (2011-13)へ削減。
となっています。
なお、地中海の沿岸零細漁業者に対しては、これら零細漁業者保護のため、30kgを下回っていても、8kg以上であれば漁獲が可能となっています。
大西洋クロマグロ 東部大西洋・地中海での漁獲量.jpg
https://www.iccat.int/Documents/Meetings/Docs/2014_BFT_ASSESS-ENG.pdf
【ICCAT, "REPORT OF THE 2014 ATLANTIC BLUEFIN TUNA STOCK ASSESSMENT SESSION (Madrid, Spain – September 22 to 27, 2014)"】

上記のグラフは、東大西洋・地中海での大西洋クロマグロの漁獲量と漁獲枠の図です。ATEは東部大西洋海域(Atlantic)、MEDは地中海(Mediterranean)での漁獲量、赤線で示されている「TAC」は漁獲枠(total allowable catch)を示しています。
Unreported estimatesは、未報告分としてこれぐらい漁獲されていたであろうと推定されている漁獲量です。この未報告分を含めると、最高で60,000トン程度が漁獲されていたと考えられています。

再びWCPFCとICCATの比較ですが、巻き網の漁期規制については
 WCPFC: 規定なし
 ICCAT: 5月26日から6月24日を漁期指定(=約11か月間の禁漁)
延縄の漁期規制については
 WCPFC: 規定なし
 ICCAT: 公海はえ縄(24m以上)につき1月1日から5月31日まで漁期指定(=7か月間禁漁)
となっています。

漁獲能力制限については
 WCPFC: 2002-04水準に制限
 ICCAT: 漁船数及び総トン数を2007年1月1日から2008年7月1日の間の基準で制限し、かつ、漁獲能力を漁獲枠に見合ったものに削減。
となっています。

ICCATではこうした規制の導入により、資源は回復に向かっていると考えられています。
以下のグラフは、大西洋クロマグロの推定産卵親魚資源量(spawning stock biomass: SSB)です。
産卵親漁量(単位:トン).jpg
【ICCAT, "REPORT OF THE 2014 ATLANTIC BLUEFIN TUNA STOCK ASSESSMENT SESSION (Madrid, Spain – September 22 to 27, 2014)"】

この結果、12,900トンまで減らされた漁獲枠(TAC)は、2017年には23,155トンまで徐々に増やされることがICCATで合意されています。
ICCATクロマグロTAC.jpg

なお、現行のICCAT規制措置(2014年採択。2015年8月2日効力発生)の詳細については、以下をご覧ください。
https://www.iccat.int/Documents/Recs/compendiopdf-e/2014-04-e.pdf
【ICCAT Recommendation 14-04: RECOMMENDATION BY ICCAT AMENDING THE RECOMMENDATION 13-07 BY ICCAT TO ESTABLISH A MULTI-ANNUAL RECOVERY PLAN FOR BLUEFIN TUNA IN THE EASTERN ATLANTIC AND MEDITERRANEAN】
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